「もう、やめよう」から始まった話
もう、やめよう。
不採用の通知を受け取った夜、私は非正規で十七年続けてきた司書の仕事を手放すことを決めた。
子どもの頃に憧れ、目指してきた仕事だった。
「好き」を仕事にした、典型のような道のりだったと思う。
長い時間をかけて選び続けてきた仕事でもあった。自分の意思だけではどうにもならないことも多かった。採用試験の結果ひとつで、道が変わることもあった。
それでも続けると決めてきたのは、いつも自分だった。
こんな日が来ることを考えなかったわけではない。非正規という立場である以上、来年の保証はどこにもない。その不安を忘れたことは一度もなかった。
ただ、それがあの時、あのタイミングで、あんな形で訪れるとは思ってもいなかった。
通知を受け取った夜、一度は再チャレンジを考えた。
不採用でも来年また受ければいい。
他の自治体を受けてもいい。
続けるための道はいくらでもあった。
けれど、心の奥から返ってきた答えは、はっきりとした「No」だった。
不採用を決めたのは他者でも、
終わらせると決めたのは私だ。
これは、私の選択だった。
司書を手放したあと、それまでの自分は大きく崩れた。
社会的な立ち位置も、肩書きも、収入も、ひとつひとつが音を立てて変わっていった。
辞めた後はいくつか仕事を経験し、今は製造業で正社員として働いている。
けれど、入社してからもいろいろなことがあって、まだ「落ち着いた」と言える場所には立てていない。
私はまだ、途中にいる。
それでもずっと選び続けている。
もちろん、いつも自分の望んだ形で選べるとは限らないし、たくさんの選択肢の中から自由に選べるわけでもない。
それでも、そのときどきで選びながら、続けたり、手放したり、立ち止まったりしながら、暮らしは続いていく。
人生は何かひとつの選択で決まるものではなくて、小さな選択の積み重ねで、少しずつ形になっていくものだ。だからこそ私は私の選択を、このブログで記録し続けることにした。
あのときの選択が、時間を経てどんな意味を持つようになったのか。
その時は分からなかったことを、後から少しずつ自分の言葉で受け止め直していけるからだ。
長い時間をかけて、
ひとつの仕事に向き合ってきた人たち。
時間と手間と愛情を注いできた人たち。
好きだから続けてきた。ここまで積み重ねてきたからこそ、簡単には手放せない。それでも、このままでいいのかと悩んでいる人たち。
これまでの自分の生き方に、不安や違和感を抱えたまま、立ち止まっている人たち。
そんな人たちにこの記録が届けばいいと思っている。
私の記録を読んで、
自分の選択の結果を、未来の自分がちゃんと引き受けてくれるのだと、少しだけでも信じるきっかけになればいいと思っている。
変わっていくことは、きっと悪いことではない。
選ぶことも、手放すことも怖いけれど、
それでも人はちゃんと生きていける。
